2013年10月20日

PDR-C カスタムレポート 低初速 後編

 COMBAT DOLL の店主です。

 今回は前回の続きです。

 ギアの品質で終了した前回ですが、補足です。

 実質、PDRの専用ギアと言う訳ではありませんので、その時のロットのタイミングなのだと思います。
 表面上のムラはギア同士の磨耗の問題も発生し、キャスティングでは組成密度での強度の低下を心配するのですが、許容範囲という部分もあると思いますので、必ずしも交換が必要になる訳ではありません。
 塗布するグリスの素材や粘度を変更したり、トルクの負担を軽減する措置を取って対応すれば良いと思います。
 過去に見てきた、海外製の物を思い出しても、そんなに悪い物ではないと思います。

 それと、マルイ製のピストンの使用ですが、サイクルの対応としてのギアカットは、先端1/3程度に留めてあります。

PDR-C カスタムレポート 低初速 後編

 これ以上落としてしまっても、後端に掛かる負担が大きくなるだけで、3枚目に干渉するタイミングを確認すると、2枚目のカットはこれで十分になります。もし、最大に取るのでのであれば、2枚目を1/2・3枚目を1/4カットにすれば、秒間20発くらいまでのサイクルに対応(スプリングレートM90くらい)できます。但し、エンド部分の負荷が大きくなるので、ピストンの消耗が早く(ノーマル比)なります。

PDR-C カスタムレポート 低初速 後編

 今回の最重要ポイントになりますが、スプリングレートとシリンダー容積とサイクルバランスです。

 二次加速ダンパーロッドを取り付けるにあたり、ピストンにブレーキが掛かり、最終ポイントでは減速してしまうのですが、これにより、ギアサイクルが早くなった場合に、前述のピストンとセクターギアの噛み合せタイミングがズレて、ピストンクラッシュをしないように調整が必要になります。

 命中精度を向上させるには、ダンパーによる打撃振動の低減と、二次加速による安定吐出を生かすのを前提としますので、その為のバランス取りが必須です。PDRは、最大7.4V2200mAまでのLi-Poバッテリーの使用が可能ですので、そこまでは安心して使えるバランスをとります。

 サイクルが早くなるのに対応するのは、スプリングレートです。弱いスプリングでは前進スピードが遅くなり、ギアの回転について来れなくなってしまいます。
 逆に強すぎては、威力の制限を越えてしまいます。そこをセーブするには、加速レーンであるバレルの長さと内径、シリンダーの圧縮容積で調整する必要があります。
 ですが、命中精度を良くする為には、発射される6mmBB弾の重量に見合った、安定加速するレーン(バレル長及び内径)と、吐出量と吐出圧が決まってしまいます。強すぎても弱すぎても精度が落ちる事になってしまいます。

 クライアント様のご要望である、「0.2gBB弾にて、初速85~90m/sで、30m先でのヘッドショット可能」のスペックは、かなりのハイスペックになってきます。
 「30mチャレンジ」と言う競技を開催されている方々がいらっしゃいます。その方々のトップスコアは、まさに、30m先でのヘッドショットを可能にするグルーピングです。基本、重量弾である0.28gを使用した競技射撃ですが、そのスペックに近付けるべく、調整していきます。

 シリンダーが並んだ画像の方に長さを書き込んでありますが、シリンダーのフチからの距離であり、圧縮容積のストロークではありませんので、ご注意下さい。

 シリンダー容積が増えると、吐出量は増えますが、圧縮するタイミングが早くなり、ピストンの前進スピードは遅くなります。
 シリンダーヘッドのノズルの内径で変化してしまう部分もあります。スプリングの強さでも変わってしまいますが、インナーバレルが決定しておりますので、そちらを基準に追いかけます。

 クルツサイズでの検証は行っておりませんが、44~32mmまでの5つのサイズでの検証を行いました。
 44mmと33mmでの最終トライアルという状況になり、サイクルバランスの関係で33mmのシリンダーの採用になっています。それぞれ、スプリングレートとピストンウエイトのバランスを取り、初速を確定させた状況でのトライアルです。
 44mmの場合は、0.25gの重量での直進性が良くなるのですが、サイクルバランスが取り難く、初速を抑えたスプリングレートでは、フルオート時にピストンが危険にさらされます。2000mAクラスでは、まずクラッシュしてしまいます。ロッドが無ければギリギリセーフなのですが、集弾性が落ちてしまいました。

 ちなみに、33mmで初速設定をした状態で、1mm長い34mmのシリンダーでは初速98m/sになってしまい、1mm短い32mmのシリンダーでは75m/sにまで落ちてしまう状況でした。たったこれだけの違いで、大きく初速が変動してしまいます。効率を求めてシビアにセッティングを出すと、これだけ変化がでてしまう訳ですね。
 これだけ、微妙になってしまうと、シリンダーグリスの状態などで、簡単に初速が落ちてしまう心配がでてしまいますので、ロッドの長さの微調整を行って、安定した圧縮ができるように追加調整を行います。

PDR-C カスタムレポート 低初速 後編

 最終的に、X3200の計測では85m/s±1・プロクロノの計測で89m/s±1(マルイベアリングバイオ0.2g)と希望の枠内で設定できました。ただ、BB弾のブランドやロットの違いで変動は出てしまうと思います。

 次に、バレル内容積とシリンダー容積を確認します。
 バレル長285mm・先端テーパー部10mmで実質275mm、内径6.05mm=7905立方mm
 (実質、シリンダーヘッドのノズル部分とローディングノズルの容積を足す必要がありますが、)
 (計算が面倒なので、割愛させて頂きます。)
 シリンダー長33mm-ヘッド挿入長さ8mmで実質25mm、内径23.8mm=44488立方mm
 5倍以上の容積差があります。
 BB弾とインナーバレルの隙間での吐出ロスを、体積比を参考に・・・
 5.95mmの直径でBB弾のホールド位置を5mm差し引いて270mmとし、7507立方mm

 本当はここで、流体力学の難しい換算式を入れたいのですが、当方の教養が足りませんので、
   どのくらいが圧送に使われて、
   どのくらいがバレル内でのBB弾の位置保持に使われて、
   どのくらいがロスとして逃げてしまうのか、
 が、ちゃんと計算ができません。期待を持たせて、すいません(笑)!

 とにかく、シリンダーストロークの検証で、1mmの長さでの急激な変化のポジションなので、5倍以上の容積差があれば大丈夫だと言う事にしておいて下さい。

 実地検証の弾道確認では、44mmのシリンダーと33mmのシリンダーでは、0.2gBB弾の時の安定感は、33mmのシリンダーの方が安定していました。教養が足りない分は、実地検証でカバー致しました。

 ここまでの検証を必要とするのは、0.2gBB弾での命中精度にこだわった仕様だからです。
 インドアフィールドがメインになるそうなので、空気の流れの変動も、屋外よりは心配が少ない環境での仕様だそうです。

PDR-C カスタムレポート 低初速 後編

 最終調整が終わったところで、パーツ状況を確認して、グリスアップ等を行い、組み上げです。
 モーターに付いている黒い帯は、モーターの回転トルクを吸収して、余剰振動を防ぐ為のラバーです。

 当然、安定した飛びを決定するのに、本体側の固定や位置調整も重要です。
 デッドスペースでの響きを軽減する為の吸音材も詰め込みます。

PDR-C カスタムレポート 低初速 後編

 正直、吸音材は無いよりはマシな程度だと思います。なんとなく静かになったような気がする程度です。

PDR-C カスタムレポート 低初速 後編 

 メカボックスの位置補正に0.3mmのシムを使用して底上げをし、アウターバレルの取り付けプレートには0.5mmのシムを使って、R部分の歪みを拾ってバレルが偏らないようにします。そして、銃口先端部の位置補正の為に、見難いですが、アルミのシムシートをかませて位置補正してあります。
 これで、レール部分とのセンターも補正されますので、サイトの調整が楽になってきます。

 インナーバレルが285mmしかありませんので、エアの圧縮膨張音が目立ちますが、サイレンサーを装備して頂ければ、サイレント効果を実感頂けます。
 打撃音や発射音が小さくなると、ギアの駆動音の方が気になってしまうでしょうが、そちらは限界がありますのでご容赦頂きたいと思います。

 久しぶりの、低初速設定のチューニングは、気合が入れられて楽しめました!
 最近の主流になっているチューニングとは別路線なのでしょうが、個人的には、こういうレギュレーションで、力量を競うゲームの方が楽しめると思えてしまいます。

 クライアント様、今回のオーダー、ありがとうございました。
 不明な点や、問題点がありましたら、遠慮無くご連絡くださいませ。

 と言う事で、発光弾の際に難有りとご連絡を頂きました。
 確認と、再調整をさせて頂きたいと思います。


   COMBAT DOLL 店主 中根

  11月17日 奥山デイズにて定例会レギュレーション)あり
  営業時間 月曜日~土曜日 19:00~21:00
  定休日 日曜日 
  年末年始 他 臨時休業あり  
  TEL 053-450-3308 FAX 同番
  メール info@combatdoll.jp
  ミリブロのメッセージからでも大丈夫です 

  PDR-C カスタムレポート 低初速 後編




同じカテゴリー()の記事画像
VSR-10 Gスペック フルチューニング
電動ハンドガン チューニング例
PSC-1 山林 チューン
PDR-C 本体チューニング 違う箇所での困難編 
PDR-C 本体チューニング 困難編
MAGPLL PTS MASADA CQB
同じカテゴリー()の記事
 VSR-10 Gスペック フルチューニング (2015-04-02 20:00)
 電動ハンドガン チューニング例 (2015-03-31 20:00)
 PSC-1 山林 チューン (2015-03-24 20:00)
 PDR-C 本体チューニング 違う箇所での困難編  (2015-03-18 20:00)
 PDR-C 本体チューニング 困難編 (2015-03-13 20:00)
 MAGPLL PTS MASADA CQB (2015-03-10 20:00)

Posted by コンバットドール  at 20:00 │Comments(4)MAGPULL PTS PDR-C

この記事へのコメント
思いのほか作業工数がおおくて驚いております。
仕様以外の弾の調整で申し訳ございません。お手数ですが再度調整願います。
しかし、フルオートトレーサー取りつけただけでも確かな消音効果があります。
これは・・・インドアなら脅威になるやもしれません。
Posted by PD at 2013年10月20日 20:53
PDさん
 コメントありがとうございます。
 実際のトラブルを、確認させて頂けるので、勉強になります。
 原因を追究の上、再調整致しますので、お待ち頂きたいと思います。
 お手数を掛けてしまいましたが、宜しくお願い致します。
Posted by コンバットドールコンバットドール at 2013年10月20日 21:59
30mでへっどショット?
今の電動ガンって、そんなに精度いいの?。。。凄いなぁ
Posted by はーまーしぃ at 2013年10月22日 18:33
はーまーしぃ さん
 コメントありがとうございます。

 条件にもよりますので100%可能ではありませんが、十分狙えるようにはなりますね。BB弾の精度も良くなっていますし、ボルトアクションのノウハウを生かす方法もあります。
  人間の頭を直径25cmの球体だとすれば、30m先のグルーピングをそれくらいにする訳です。

 ただ、0.2gの軽量弾では、空気の流れの影響に左右され易いので、難しくなります。
 屋内と言えども、上昇や下降の気流(対流)は発生するでしょうし、射手の技量(正確な射撃)も要求されます。
 サバイバルゲームでは、落ち着いてじっくり狙えるタイミングも少ないでしょうから、結構大変だと思いますよ。

 的撃ちなら当たるのに、ゲームではヒットし難いのは、現実ですからね。
 銃の性能が信頼できれば、技術も向上させられますので、慣れればかなりの確立になると思います。
Posted by コンバットドールコンバットドール at 2013年10月22日 23:24
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。