2013年10月09日

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2

 COMBAT DOLL の店主です。

 さすがに、週に1度くらいは、テクニカルな記事のアップをさせて頂きます。

 遠方よりご依頼されたカスタム品での内部説明も兼ねさせて頂いております。

 今回は、ご依頼品の初期状態での内部状況に合わせて、ピストンとセクターギアの消耗内容のご説明です。

 本体は次世代G36Cです。

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2
 ピストンの状況

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2
 セクターギアの状況

 正直、まだ使用可能な状況ですが、重量弾に合わせた強めのHOPでは、時間の問題です。バッテリーの特性が良い物でも危険です。
 現実に、当店での0.2gでの適正HOPで、純正バッテリー(ミニNi-MH8.4V1300mA)ならば、問題無く作動発射していました。

 なぜ、こうなったのか? を推測も含めて検証しましょう。

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2
 通常の噛み合わせの状態

 ピストンの前進とギアの回転のタイミングが合っていればこの状態の繰り返しで、摩擦により、ギア(亜鉛合金)が磨耗して行きます。マルイ純正のピストンの素材は亜鉛合金よりも耐熱・耐摩耗性に強く、カタログスペックで使用されている限りは、セクターギアの方が消耗品になっています。
 次世代のセクターギアは、スパーギアとの兼ね合いも含めて、メッキ仕上げで耐久性の向上が図られています。

 ピストンとセクターギアの状態から、噛みあいを再現して確認してみます。

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2

 まずは、ポイントA・B付近の削れ位置です。
 画像のように、ピストンが前進しきる直前での噛み合いとなってしまっていて、バッテリーのスペックでの電流量の増大や、電気の吐き出し特性の向上、電圧の増加が原因での、ギアの回転スピードが早くなってのタイミングずれであったり、HOPを強めに掛ける事で、圧縮エアの抜けの抵抗が大きくなり、ピストンの前進スピードが不足してのタイミングずれであったりします。

 カスタム品のピストンがギアの部分を削り落としてあるのは、このラグを緩和する為の仕様な訳です。
 ピストン後端から2・3枚目の削れは、ピストンの前進スピードが、ギアの回転速度より遅くなっている為におこる破損だと解釈してもらえれば良いと思います。

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2

 ポイントC・D付近の削れの検証ですが、こちらは、ギアの削れ状況も注目します。
 先の画像は、最初の噛み合い位置ですが、これは、BB弾が詰まってしまった場合の状況です。

 射撃中に弾が出ない場合は、空撃ちになってしまっているのか、弾が詰まってしまっているのかで、対処が前々違ってきます。弾詰まりの場合は、直に射撃を止めて、詰まったBB弾を取り除かなくてはいけません。間違っても、後ろから押し出せば良いなどと、追い討ち(撃ち)を掛けてはいけません。画像のピストンとギアは、まだマシな方です。

 BB弾がチャンバーやバレル内で詰まってしまった場合は、圧縮されたエアが吐き出せなくなってしまい、圧縮エアの圧力で、ピストンの前進が止まってしまいます。その止まった所に、1週してきたセクターギアの歯が、ピストンのラックギアの途中から噛み合おうとして削り込んでしまう訳です。

 この画像の状況だと、シリンダー長の1/3の圧縮をした時点でのタイミングになっていますが、穴あきタイプのシリンダーだったので、このくらいの位置になっています。フルストロークのシリンダーであれば、もっと早いタイミングで削られる状態ですね。

 歯の先端からの噛み合いになってしまうので、削れてしまうのですが、この時は、円弧を描いて斜め下から上がってくるギアの歯に対して、直線に進んでくるピストンの歯の方が弾かれる状況となり、強度があるはずのピストンの歯の方が負けてしまいます。

 後の画像は、無理やり噛み合った、ピストンとギアの歯は、枚数が合わなくなってしまっていますので、ピストンが下がりきっているのに、セクターギアはピストンを後退圧縮させようとしてしまいます。その衝撃と負荷に耐えられず、セクターギアの歯も削れてしまっている状態なのです。

 ピストンの金属歯の部分が、5回衝突を繰り返す状態です。セクターギアがピストンに対して、削岩機のように5連打を喰らわせる訳です。これでは、どんな素材でも異常が出ます。この場合は樹脂製の軸受けが吸収する役目を果たしますが、耐えられなくなれば破損です。

 もう一つ注目して欲しいのは、セクターギアのタペットプレートを引き下げる突起の位置関係です。

 先の画像のタイミングが、タペットプレートを引き下げ、ノズルを後退させ始める位置なので、密閉されたチャンバーとバレル内の圧縮エアの逃げ始めのポイントです。要は、この位置までセクターギアが回転して来ないと、閉じ込められたエアが開放されません。

 後の画像の位置は、ノズルが完全に後退した位置であり、ピストンに対しての圧縮抵抗が最小になっています。
 セクターギアの残りに、スプリングの力がフルに掛かってしまう状況なのです・・・。

 BB弾がノズルの前に上がってくるのもこのタイミングです。弾詰まりを起こしているチャンバー内に無理やり押し込もうとして、ノズルやタペットプレートの変形の原因になる場合もあります。

 「弾詰まり」は、いとも簡単に電動ガンの内部を破壊してしまうのです・・・。一回で全壊しない場合もありますが、フルオート射撃の時は、弾詰まりの音を聞き分けて、即、射撃を中止して下さい。

 そして、次世代限定の部分ですが、リコイルウエイトとのタイミングですね。

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2

 確認してみると、ウエイトの下げ始めの位置は、セクターギアの後半6枚目であり、ウエイトを動かすストロークは、ピストンのギア5枚分でしかありません。

 リコイルウエイトのリターンスプリングは、メインスプリングから比べても弱いです。リコイルウエイトの前進が遅れた場合は、ピストンとリコイルウエイトで、クロスカウンターになってしまい、ギアの噛み合せ部分に衝撃が集中してしまいます。

 ピストンの前方から5枚目前後が削れてしまっていたら、サイクルが早くなり過ぎているのか、汚れ等でリコイルウエイトの動きが悪くなっているのかを確認して対処が必要になります。

 この画像のギアの状況からいけば、負荷の大きくなる箇所が損耗状況が大きいので、このギアは要交換との判断が無難です。もう、使用限界ギリギリと言って良いですね。

 上記までを考えて、ピストンの破損状態を考察すると・・・

故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2

 バッテリー特性の良い物(メーカー純正品対比)を使用していて、異物などで、たまたま弾詰まりを起こしてしまった事がある? もしくは、0.2gを超える重量弾を使用していてHOPは強めのセッティングでの使用状況だったのでは? 
 と言った具合に推測します。

 正直、クライアント様には確認を取っておりません。違う原因もあるでしょう。複合的要素もありますので、断定にまでは至りませんが、対策を盛り込んで、修理カスタムが必要になる訳です。

 こんな状態確認で、考察して対策を取っていると言った一例だと見て頂ければ幸いです。

 久しぶりのテクニカルな記事の投稿でした。


 10月13日 奥山デイズにて定例会レギュレーション)あり
   営業時間 月曜日~土曜日 19:00~21:00
   定休日 日曜日 
   年末年始 他 臨時休業あり  
   TEL 053-450-3308 FAX 同番
   メール info@combatdoll.jp
   ミリブロのメッセージからでも大丈夫です

 故障の原因を見極める ケース11 ピストンとセクター その2

 




同じカテゴリー(故障の原因を見極める)の記事画像
えっ!? マジで・・・(涙) マルイさんお願い致します・・・
マルイ MP5K 給弾不良改善
マルイ 電動MP7 メカボックス破損
STAR FAL L1A1 レンジアップチューン
電動ガン「メカボックス」の消耗部分
スイッチってこんなに消耗するのね・・・ 次世代SCAR-L
同じカテゴリー(故障の原因を見極める)の記事
 えっ!? マジで・・・(涙) マルイさんお願い致します・・・ (2015-04-01 20:00)
 マルイ MP5K 給弾不良改善 (2015-03-28 20:00)
 マルイ 電動MP7 メカボックス破損 (2015-03-27 20:00)
 STAR FAL L1A1 レンジアップチューン (2015-03-25 20:00)
 電動ガン「メカボックス」の消耗部分 (2015-03-23 20:00)
 スイッチってこんなに消耗するのね・・・ 次世代SCAR-L (2015-03-21 20:00)

Posted by コンバットドール  at 23:43 │Comments(0)故障の原因を見極める

<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。